日本の食料自給率について改めて想うこと

環境・エネルギー・健康を専門とする筆者が、日頃感じていることを綴っています。
みなさんからのご意見・ご感想をお待ちしています。なおこの原稿は3月20日に書いています。

ロシアの軍事侵攻が教えてくれた

ロシアがウクライナに軍事侵攻を始めてから3週間以上経ちました。いえ、ロシアが、というよりは、Vladimir Putinが軍事侵攻しているという方が、正しいかもしれません。

現地の悲惨な状況が、マスコミやSNSを通じて全世界に伝わっています。

それを見ても、何もできない自分に対して、後ろめたさを感じています。

ウクライナの若者が戦争で命を落とすくらいなら、自分が戦うと言って、ウクライナ政府が募集した義勇兵に応募した、元自衛官の方がおられました。

本当に頭が下がります。

マスコミは、ガソリン価格が上がった、小麦の値段が上がった、カニやイクラが品不足になる、市民生活に影響が出ている、と連日のように報道しています。

インタビューされた人が決まったように「値段が上がると、生活がますます苦しくなります」とコメントしている画が出てきますが、見るたびにわたしは違和感を覚えています。

「カニやイクラの値段が上がったら、食べなければいいんじゃない。なんなら、ふだんからそんなに食べていないから、関係ないし…。」

「小麦の値段が上がったのを機会に、お米を食べる回数を増やせばいいんじゃないの。そもそも、肥満の人が多いのだから、これを機会に食べる量を減らしてダイエットしたら…。」

「本当に生活が苦しくなっている人もいるけど、みんながみんなそうじゃない。大して影響がない人もたくさんいるはず。危機を煽ってるんじゃないの。」

今回の一件で、ロシア産の海産物を扱っている業者さんが苦境に立たされているという報道がありました。それは事実でしょうし、それに対しては気の毒に思います。

でも、フォーカスされるべきポイントはそこなのでしょうか。

ウクライナでは、罪のない人が攻撃され、家を追われ、命を落としています。

それに比べたら、日本国内で起きていることなど、大したことではないのでは。

いま、日本でなに不自由なく過ごしているわたしたちが、少しぐらい不便な生活を強いられたところで、我慢したらよいと考えるのは間違っていますか。

いまわたしたちが最も簡単にウクライナを支援する方法があるなら、ロシアからモノを買わないことです。

ロシアからのエネルギー供給に依存しているヨーロッパでさえ、エネルギー依存率を下げるという目標を掲げました。

しかし残念ながら、日本ではそのような意見はあまり聞いたことがありません。

日本ではなぜ、ロシア産製品に対する不買運動が表立って起きないのでしょうか。

それは、日本が経済的に自立できていないからです。

自立できていない国、日本

日本は豊かな暮らしをするために、世界中から食料やエネルギーを買い付けています。

食料自給率は37%(2020年度、カロリーベース)、エネルギー自給率は11.2%(2020年度)しかありません。

わたしは30年以上、環境やエネルギーに関わる仕事をしてきましたが、この間、自給率の数値は改善されず、エネルギー自給率については福島第一原子力発電所の事故の影響もあり、大きく悪化しています。

エネルギーについては、言いたいことが山ほどあるので、別の機会にしますが、食料自給率の低さも深刻な問題です。

もし、日本周辺で軍事衝突などが起きると、輸送路が遮断され、食料不足になる恐れがあります。

なぜこのことが、もっと取り上げられないのでしょうか。

戦争になればよい、と言っているのではありません。戦争には反対です。

しかし、日本から戦争を仕掛けなくても、ウクライナのように、戦争に巻き込まれる可能性があることを、認識しておくべきです。

日本は憲法で戦争を放棄したから、他国から攻められることはないと思っているなら、それは大きな間違いです。今回のウクライナで起きていることは、日本に無関係ではありません。日本の周囲には、ロシアを含めて、日本と普遍的な価値観を共有できない国がいくつもあります。

ウクライナへの軍事侵攻で、ガソリン、小麦、水産物の値段が上がって、生活に困ります、という報道は間違っていませんが、それに対して、当面どう対処すべきなのか、また将来に向けて、どう対応するのか、この機会にもう一歩踏み込んで考えるべきです。

日本経済は、外国に工業製品を買ってもらうことで成り立っているので、外国の農産物を買うなと言うつもりはありません。ただ取引きする相手を考えたほうがよいのではないでしょうか。

最近まで日本製品の不買運動をしていた国、拉致した人を返さずミサイルを発射している国、個人情報が全て抜き取られて、人権などないに等しい国などの製品を買う理由がわかりません。

政治と経済は別、という意見もありますが、本当にそうでしょうか。

食料安全保障ということばがあります。

食料は、有力な武器になります。

その大事な食料の供給を、日本と普遍的な価値観を共有できない国に頼るなど、考えられないことです。

値段が安ければよいと、場当たり的な対応をしていると、有事の際に取り返しのつかないことになってしまいます。

そしてそのツケは、次の世代が負うことになります。

ロシア産水産物の禁輸すらできない日本

ロシアへの経済制裁の一環として、日本政府はロシア産水産物の禁輸を検討していましたが、断念したそうです。

ある新聞の報道によれば、禁輸すればロシア産水産物を扱う加工業者が廃業に追い込まれる可能性があるため、与党議員の抵抗が激しいというのが理由だそうです。

最近、新聞にもフェイクニュースがよく載っているので、この報道が事実かどうかわかりませんが、もし事実だとすれば、まったく馬鹿げていると言わざるを得ません。

一部の水産加工業者の利権を守るために与党議員が動き、それがまかり通ってしまうのです。ロシア産水産物を扱っている水産加工業者の売上高は、全産業のいったい何%なんでしょうか。

先日、ロシアでの事業継続を表明したユニクロが、各方面からの批判を浴びて、事業継続を断念しました。多額の法人税を納めている大手企業は批判されて、中小零細企業は与党議員が守るというのは、完全にゆがんでいます。

つぎにこれらの水産加工業者が廃業に追い込まれるのを防ぐということは、これからもロシア産水産物を輸入し続けるという、明確な意思表示です。こんなことをしていたら、ロシアから足元を見られるだけでなく、いまで経っても食料の自給率は上がりません。

水産加工業者がつぶれてもよいと言っているのではありません。

ただ、自由主義経済の下で、どのような商売をするか自由に選べるのですから、状況変化による損害も、自分で負うのが大原則です。

国が禁輸できないのなら、消費者が買わないようにするしかありません。

われわれ一人ひとりの消費行動が大切です。

ほとんど影響はないかもしれませんが、少なくとも私は、ロシア産の水産物は口にしないつもりです。

まとめ

日本の食料自給率は37%しかありません。これを少しでも高くなるよう、何らかの手を打つべきです。外国製品に関税をかけるとか、そんな簡単な対応で片付く問題ではありません。

次に、現時点では海外からの食料輸入に頼るのは仕方ないとしても、買う相手をよく考えるべきです。安ければなんでもよいというわけではないと思います。少なくとも、日本に対して敵対的な行動を取っている国からは、できるだけ食料は輸入しないことです。日本は自由貿易を標ぼうしているので、国として規制ができないというのであれば、消費者自ら、特定の国から輸入される食品は、買わないように行動するしかありません。

最後にこれから10年後、20年後のことを考えた消費行動が必要です。日本で食料が生産できなくなると、困るのは次の世代の人たちです。自分たちには関係ないとは思わず、将来のことも考えて行動しませんか。

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