ゲルハルト・リヒター展

国立近代美術館で開催されているリヒターの展示を見てきた。リヒターの大規模個展は、どうしても観に行きたいと思って飛行機に飛び乗ったパリのポンピドゥセンター以来だなと調べてみたら、ちょうど10年前。彼が80歳の時だった。そして、現在90歳という事実にも驚く。この時は、テートモダンでダミアン・ハースト観てから、パリに移動して、雲を描いたフォトペインティングに癒されたことは今も印象に残っている。

今回の展示で一番印象に残ったのは、ストリップシリーズ。2011年から制作されているのだが、2011年に79歳だったリヒターが1990年に制作されたアブストラクト・ペインティングをスキャンし、デジタル画像を縦に2等分し続け、幅0.3ミリほどの細い色の帯を作り、それを鏡うつしにコピーして横方向に繋げて、最終的に横縞へと還元させて同作品。アートへの造詣が深くない私には、これがどれほどすごいことかというのは、正直理解できない。

ただひたすら感動したのは、80歳を目前に世界的な巨匠となってもなお、新たなジャンル、デジタルを駆使したアートに挑戦するリヒターの姿勢である。彼にとってはなんでもない当たり前のことかもしれないが。本来は年齢がどうこう言いたくないし、幾つになってもなんでもできると思うし、若宮正子さんやリヒターのように、新たな挑戦を続けながら歳を重ねていきたいし、いけると思っているが、先人の仕事は元気をくれるなと改めて感じた展示だった。

そして、さらに2014年に制作され、日本初公開となるビルケナウには衝撃を受けた。ネタバレになるため、詳細は割愛するがドイツ東部のドレスデンに生まれたアーティストである彼が、ホロコーストという主題に向き合い続け、80歳を超えてやっと完成させた作品は一見の価値があるだろう。

正直、全体を通してパーッと気が晴れる展示ではないが、今のタイミングで訪れてみてほしい展示である。

東京国立近代美術館
2022年6月7日〜10月2日(日)
東京都千代田区北の丸公園3−1
https://www.momat.go.jp/am/exhibition/gerhardrichter/

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