世界にひとつ、自分だけの音楽

ホロスコープを眺めていると、ときどきそれが楽譜のように見えてくることがある。

これはもしかしたら何らかの音楽になるのではないか。天体やサイン、ハウス、そしてアスペクトに一定の法則性を持たせることができれば、1枚のホロスコープから何らかの音楽が生成され、それはきっと自分が生まれもったものを音にして表現した何かになり得るに違いない、と考えていた。でもそれを実現する方法は、音楽に関する十分な知識を持ち合わせていない私には全く思い浮かばず、ただ着想するだけで終わっていた。

あるとき、とあるサービスを開始します、という案内を見つけた。それは、「Horoscope Musica」世界でひとつの星から生まれた音楽。ネイタルチャート(誕生日、出生時間、出生場所を元に作成したホロスコープ)を元に世界でたったひとつのピアノ曲を作曲してお届けします、というもの。まさに自分が考えていたようなことと似たようなことをその道のプロの作曲家・演奏家の方が実現してくださることに胸が高鳴り、早速依頼した。

しばらくして、音源CDとホロスコープを読み解いたイメージを表現したシンプルなブックレットが送られてきた。早速聴いてみた。星が煌めくようにきらきらした旋律が印象的な静かな導入部分に始まり、最初はほんのきっかけにすぎなかったような光の粒が段々と少し大きなかたまりのようなものに成長し、さらに集まった光が壮大になって無限に広がる空間を明るく照らし、気づくと今まで想像しなかったような新しい美しさを提示して、最後は世の中に対する投げかけのような余韻を残して終わるというようなものだった。

私が最初に考えていたアイデアは、一定の法則性に基づいてパターン生成されるような(ある意味AI的な)音楽だったのに対し、このサービスはプロの作曲家の方がホロスコープから感じたインスピレーションを元にその方の感性で作曲されていて、機械的なものや単なるパターンの展開に終始せず、作曲家自身の温かい眼差しや寄り添い、そして音楽に関する知性が感じられた。自分が自分らしくいることを受容し、自分の原点に立ち返るような感覚を思い出させてくれる、詩的で抽象的な音楽だ。

実を言うと、はじめてこの音楽を聴いたとき、音楽が提示している世界観に対して自分の理解が追いつかずにこれが本当に自分でいいのか、と歯がゆいのような感覚を得ていた。しかし最近になって、他の方の音楽を聴き比べる機会があり、改めてゆっくり聴いてみると、その音楽にあらわれているニュアンスに、それぞれの持ち味がまさに表現されていると実感することができ、ようやくそこに表現された自分らしさに対して自覚することができた。今はときどき聴き返すと、無理して誰かになろうとしなくていい、自分の良さを思い出させてくれるような感覚を得ることができる。ホロスコープを音楽という新たな表現で感じてみることは、占星術そのものとはまた違ってとても興味深いのと同時に、言葉の壁を超えて、音楽の持つエネルギーや清らかさを再確認する機会ともなっている。

photo by Yasin Gündogdu on pexels

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です