東向きの部屋

放浪癖ではないけれど、ここ10年で6回引越しをしました。自分の家探しはおおよそ直感で「合理的に」「失敗しないために」条件を決めてかかるのはどうも苦手です。誰かの物差しで自分を勘違いしそうで。

物件を見るときは確認よりも想像がしたいです。持ち帰って、では意味がないからその場でエスキスみたいに。自分の生活を重ねて、ざっくりとメインカットが描けるならある程度はうまくやれるかな、と考える。 わたしがひとつ気にするのは東の方向です。毎日やってくるその時間に、朝日いっぱいの部屋に住んでいたいから。今は東向きの小さな天窓がある部屋に住んでいます。江ノ電の音で目が覚めて、太陽が高くなるにつれ、波乗りに向かう人の足音やトンビの鳴声、近所の話し声で賑やかになる朝が気に入っています。

不都合を頑なに拒まない。これも家探しで気をつけていること。エレベーター無しの5階に住んだときは屋上を独り占め(しかも少し痩せたラッキー!)とか、絶対に無理と思っていたシェア暮らしが夢のような一年だった!とか…当初気掛かりに思っていたことは、自分では作らない料理をいただく時のような発見があったり、結果、思い出のA面になったりもするんですよね。今の家で辞めたのは、テレビと食器棚。窓が多い= 壁が少なく、うまく配置できなかったので後輩と骨董屋さんに譲りました。

さておき、安直に多くを求めない人ほど(条件チェックに余念がない人より)cozyな空間を持っているのは確か。小さな信念、それがささやかでくだらないものであるほど、スタイルに現れる気がします。潔く捨てたもののことはみなさん案外すぐに忘れがちなところも、人間味があっておもしろいなと。

家ではないけれど印象に残っている Amtrak の夜明け。
飛行機で数時間の距離を、寝台列車で移動する旅の途中で。

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