風を切る

気温があまりに気持ち良くて、少し離れたスーパーへ寄って帰ることにした。

材木座では、誰かのお風呂のシャンプーの匂い。 由比ガ浜では、踏切待ちで中華の匂い。 大仏切通では、廃墟寸前だった元体育館がレストランに生まれ変わって光が灯っている。 鎌倉山のさくら道を下るときに、スケボーの男子を追い越した。 気持ちいいね〜とハイタッチしたい気分で。 モノレールに沿って片瀬山を越えたら江ノ島へ。

タイムセールになった魚とワインを買って、 さっきより昇った月を見ながら、今度は海沿いを走って帰る。 三浦半島まで続く稜線の影と、家の灯りが何かの絵本みたいだった。 慣れきったつもりでも、時々たまらなくこの街が好きだと思う場面がある。

バイクに乗るきっかけは、いつもの電車が観光客で混むようになり悶々とする朝が増えた こと(心が狭くてすみません)。そんなとき「きっと似合うよ」と中古のバイクを勧めてく れたひとがいて、あたらしい生活が始まったのです。

走っていると、昔を思い出しました。やりたいことがわからないまま、社会人になるためだ けに就活をしていた頃。悩みながらも、履歴書の趣味欄はなぜか「探検」と書いていたこと。 それが何になるの?と投げやりな気持ちで。

わからなくしていたのは自分をないがしろにしていたせいだって今ならすぐにわかるなあ。 あの頃に戻って「残念ながら、20 年経っても、通ったことのない道が好きで建物が好きな のは変わってないよ。」ってネタばらしがしたい。「何者になれなくても、感じよく生きられ たらそれが最高」って言ってやりたい。

こちらに来て 7 年目、良い偶然だったと思います。 街を感じながら、自分と話す時間。いっぱい出かけよう!ブルルン

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